企業チャンネルがネタ切れする本当の理由──企画は「考える」ものではなく「集める」もの
YouTubeを始めた企業が最初にぶつかる壁が、だいたい10本目あたりで訪れます。「もう話すことがない」。しかし運用代行として見ていると、ネタが尽きている会社は一社もありません。尽きているのはネタではなく、ネタを見つける方法のほうです。この記事では、ゼロから考えるのをやめて、社内にすでにあるものを企画に変える方法をお伝えします。
なぜ10本目で止まるのか
多くの企業は、最初に「伝えたいこと」から企画を出します。会社の強み、商品の特長、サービスの流れ、代表の想い。これらは確かに価値がありますが、数に限りがあります。だいたい10本ほどで在庫が尽きる。これが10本目の壁の正体です。
一方で、視聴者が知りたいことは無限にあります。なぜなら、お客様は一人ひとり状況が違い、同じサービスに対しても違う疑問を持つからです。企画の源泉を「自社が言いたいこと」から「顧客が知りたいこと」に切り替えた瞬間、ネタ切れは起きなくなります。
運用の現場から
ご相談で「ネタがない」と言われたとき、私はいつも同じ質問をします。「お客様から一番よく聞かれる質問は何ですか?」──この質問に、答えられない企業はまずありません。むしろ5分も話せば10個以上出てきます。つまりネタは最初からあって、それが「動画の企画」という引き出しに入っていないだけなのです。
社内にすでにある、4つの企画の発掘源
新しく考えるのではなく、すでにある情報を企画に変換します。どの会社にも必ずある4か所を順に掘ってください。
- 営業・問い合わせでよく聞かれる質問 最も確実で、最も成果に近い源泉です。商談で繰り返し説明していること、問い合わせフォームに毎回書かれてくる質問、見積もり前に必ず確認されること。何度も聞かれるということは、それだけ多くの人が検索しているということです。しかもこの種の動画には副産物があり、商談前に見てもらうことで説明の手間が減り、動画が営業資料として機能しはじめます。
- 断られた理由・失注の原因 あまりやられていませんが、よく効く源泉です。「高いと思われた」「他社との違いが分からないと言われた」「必要性が伝わらなかった」。これらはすべて、見込み客が抱えたまま解消できなかった疑問です。動画で先に解消しておけば、次の商談は同じ地点から始まりません。
- 現場のスタッフが知っていること 経営層や広報が企画を考えると、どうしても会社視点になります。一方で、現場で毎日お客様と接しているスタッフは「お客様がどこでつまずくか」を体感で知っています。月に一度、現場に「最近よく聞かれたこと」を尋ねるだけで、企画リストは更新され続けます。
- 検索されている言葉 以前の記事でも触れた検索キーワードです。YouTubeの検索窓に自社の業種やサービス名を入れ、表示される予測候補をすべて書き出す。これは「今まさに検索されている言葉」そのもので、企画のヒントとしてこれ以上確実なものはありません。
1つのネタを5本に増やす「分解」の考え方
発掘した質問は、そのまま1本の動画にするともったいない。粒度を変えると、1つの質問から複数の動画が生まれます。
分解の切り口は決まっています。全体像/条件や例外/やってはいけないこと/実例/工夫やコツ。この5つを当てはめるだけで、質問1つが5本の動画になります。発掘した質問が10個あれば、それだけで50本分。週1本なら1年分です。
1時間で企画リストを作る手順
会議室を1時間押さえて、この順番で進めてください。一人でもできますが、営業担当が同席すると精度が上がります。
- よく聞かれる質問を、思いつく限り書き出す(20分) ここでは良し悪しを判断しません。「こんな初歩的なことは動画にならない」と思う質問ほど、実は検索されています。プロには当たり前でも、お客様には初めてのことばかりです。
- 顧客の検討段階で3つに仕分ける(15分) 「まだ知らない段階」「比較検討している段階」「依頼直前の段階」。どこの質問が多いかで、チャンネルの性格が決まります。問い合わせを増やしたいなら、比較検討と依頼直前の質問を優先してください。
- 上位10個を5つの角度で分解する(20分) 前述の全体像/条件/NG/実例/コツを当てはめます。無理に5本作る必要はなく、成立するものだけで構いません。
- 撮影しやすい順に並べ替える(5分) 資料や事例の準備が要るものは後ろへ、すぐ話せるものを前へ。最初の数本は「準備なしで話せること」から始めるのが続けるコツです。
このリストは一度作って終わりではありません。商談や問い合わせで新しい質問が出るたびに1行足す。この習慣さえあれば、企画会議という時間そのものが不要になります。
やってはいけない企画の出し方
- 競合チャンネルの企画をそのまま真似する 同じテーマでも、自社の顧客層や強みが違えば刺さりません。参考にするのは「切り口の構造」であって、題材そのものではありません。
- 社内会議で多数決を取る 「面白いかどうか」を社内で投票すると、無難な企画が残ります。判断基準は社内のウケではなく、その質問を検索する人が実在するかどうかの一点です。
- 流行りの話題に寄せる 一時的に再生数は伸びても、集まるのは見込み客ではありません。企業チャンネルの企画は、自社の商圏にいる人だけに向けて作るほうが成果につながります。
まとめ
ネタ切れは、才能やアイデアの問題ではありません。企画を「ひねり出すもの」と捉えている限り必ず枯れ、「集めて分解するもの」と捉えた瞬間に枯れなくなります。
今日からできる最初の一歩は、営業担当に「最近よく聞かれる質問を5つ教えてください」と聞くこと。それが、次の25本分の企画の入り口です。