ショートを出しても問い合わせが増えない理由──ショートと長尺は、担う役割がまったく違う
登録者は増えたのに、問い合わせは増えない
ショートは、企業チャンネルにとって確かに強力です。長尺を10本出しても数百回だったチャンネルが、ショート1本で数万回に届くことは珍しくありません。登録者も目に見えて増えます。
ところが、問い合わせフォームは静かなまま。ここで多くの会社が「もっとショートを増やそう」と判断してしまいますが、それは出口のない道をさらに走ることになります。ショートで増えた登録者と、相談につながる登録者は、同じ「1人」ではありません。
ショートは「探して見る」ものではない
この差は、視聴者がその動画に出会うまでの経緯から生まれます。長尺を見る人は、検索したり関連動画から選んだりして自分の意思でその動画を開いています。一方ショートは、縦にスワイプしているところへ流れてくる。選んだわけではありません。
だから、面白ければ最後まで見るけれど会社名は覚えていない。登録ボタンも「また流れてきたら見てもいい」くらいの軽い意思表示です。課題を自覚していない人にも届くということは、裏を返せば見込み客ではない人にも大量に届いているということでもあります。
これは欠点ではなく、ショートがそう設計されているというだけの話です。InstagramのリールやTikTokと同じ、認知のための仕組みなのです。
ショートと長尺は、担う役割が違う
以前の記事で「他のSNSは入口、YouTubeは出口」とお伝えしました。実はこの線引きは、YouTubeの内側にもそのまま走っています。ショートは他のSNSと同じ入口側、長尺が本来の出口側です。
つまり、ショートは「知ってもらう」ための場所であって、「信用してもらう」ための場所ではありません。信用がないところに問い合わせは起きないので、ショートだけを増やしても成果は動かないのです。
ショートから長尺へ送る3つの手段
やるべきことははっきりしています。ショートで集めた人を、長尺に渡すこと。これを設計しないまま本数だけ増やしても、結果は同じです。
- 「続きは長尺で」が成立する構造にする 長尺を切り抜いてショートにするのではなく、最初から役割を分けて作ります。結論だけをショートで、その理由と手順を長尺で。切り抜きは「もう見た」と思われて終わりますが、この作り方なら続きを見る理由が生まれます。
- 固定コメントと概要欄に、長尺を1本だけ置く ショートにも概要欄と固定コメントがあります。ここに関連する長尺を置いておく。置くのは必ず1本だけで、「この話の詳しい解説はこちら」と一言添える。複数並べると、どれも見られません。
- 再生リストで受け止める ショートから来た人は、チャンネルに興味を持っても次に何を見ればいいか分かりません。テーマごとの再生リストを作ってチャンネルトップに並べておくと、選ばせずに次の1本へ送れます。
ショートを使うべき会社/まず長尺を整えるべき会社
すべての企業チャンネルがショートをやるべきかというと、そうではありません。判断の目安はこうです。
ショートだけで判断してはいけない指標
- 登録者数だけで成果を測る ショートで増えた登録者は、長尺の視聴につながるとは限りません。YouTubeアナリティクスはショートと長尺を分けて見られるので、長尺の視聴回数が増えているかを別に確認する。ここが動いていなければ、渡し方が機能していないということです。
- ショートの再生回数を長尺と並べて報告する 桁が違うので、並べた瞬間に長尺が失敗しているように見えます。ショートと長尺は別の指標として扱い、社内資料でも分けて載せる。同じ表に入れると、判断を誤らせます。
- 総再生時間をまとめて見る ショートは1本が短いぶん、総再生時間が伸びても「深く見てもらえた」ことにはなりません。長尺の平均視聴時間は、必ず分けて確認してください。
今月からできること
すでにショートを出している会社であれば、新しく撮らずに手を入れられます。
- アナリティクスでショートと長尺を分けて見る(10分) 先月の数字を、ショートと長尺で分けて書き出すだけです。ここで乖離が見えれば、何を直すべきかがはっきりします。
- 再生数の多いショート3本に、長尺への案内を置く(20分) 固定コメントに関連する長尺を1本と、「この話の詳しい解説はこちら」の一言。置くのは1本だけに絞ってください。
- 次のショートを「結論だけ」で作ってみる(次回の撮影から) 長尺の切り抜きではなく、理由を長尺に残す作り方に変えます。渡す先があって初めて、ショートは入口になります。
まとめ
ショートは敵でも無駄でもありません。ただし、認知の道具を教育の道具として使うと、数字だけが増えて成果は動かないままになります。
増やすべきはショートの本数ではなく、ショートから長尺へ渡す設計です。今日からできる最初の一歩は、先月の数字をショートと長尺に分けて並べてみること。そこに差が出ていれば、原因はもう分かっています。