「社長が出たくない」で止まる企業YouTube──出演者の決め方と、人に依存しない体制
チャンネルは企画ではなく、出演者で止まる
YouTubeを始めると決めた会社が最初に用意するのは、たいてい企画です。ところが撮影の日程を押さえる段になって、急に話が進まなくなる。社長は「自分が出るのはちょっと」と言い、現場は「本業がある」と言い、広報は「自分が話す内容ではない」と言う。
ここで多くの会社が、出演者を決めないまま企画の練り直しに戻ってしまいます。けれど企画をいくら磨いても、話す人が決まらなければ1本も公開されません。先に決めるべきは、企画ではなく出演者のほうです。
社長が出るべき会社と、出ないほうがいい会社
「社長が出たほうがいい」とよく言われますが、全社に当てはまる話ではありません。判断の分かれ目ははっきりしています。
顔出しなしで成立させる4つの型
「社長も出ない、社員も出ない」となっても、企業チャンネルは成立します。実際に動いている形は、大きく次の4つです。
この4つのうち、いちばん早く始められるのは1番の「手元・工程を映す」型です。話す技術が要らず、現場の作業をそのまま撮ればよく、しかも他社が真似しにくい。製造業や建設業で強いチャンネルに工程ものが多いのは、この理由からです。
現場スタッフを出すときに決めておくこと
社長ではなく現場の社員に出てもらう選択は、とても有効です。作業の説明に説得力が出ますし、採用面でも効きます。社長の時間を使わずに済むのも大きい。ただし、始める前に3つだけ決めておいてください。
- 出演の同意を、書面で取る/口頭だけで始めると、後で揉めます。撮影前に一枚で構いません。
- 退職・異動したあとの動画の扱いを決める/公開を続けるのか、非公開にするのか。辞めてから相談すると、ほぼ確実に揉めます。
- 出演を業務として位置づける/手当なのか業務時間なのか。「善意のお願い」で続けると、必ずどこかで止まります。
担当者が辞めてもチャンネルが死なない作り方
企業チャンネルで本当に怖いのは、伸びないことではなく続かなくなることです。そしてその原因のほとんどは、1人に全部が乗っていることにあります。
とくに見落とされがちなのが、いちばん下のアカウントの権限です。担当者の個人Googleアカウントでチャンネルを作ってしまうと、その人が辞めた瞬間に会社がチャンネルを触れなくなります。ブランドアカウントにして、管理者を最低2名にしておいてください。今日できて、将来いちばん効きます。
出演者を決める前に確認しておくこと
社内で話す前に、この3つの答えを用意しておくと会議が1回で終わります。
- 月に1回、半日の撮影時間を押さえられるか(5分) 出演候補者の予定を見て、実際にブロックできるか確認します。ここが確保できない人は、どれだけ適任でも出演者にしない。これが最大の判断軸です。
- 顔出しが必須かどうかを決める(10分) 図1の4つの型を見て、自社の内容が顔出しなしで成立するかを判断します。成立するなら、出演者探しの難易度は一気に下がります。
- チャンネルの権限を会社のものにする(15分) ブランドアカウントに切り替え、管理者を2名以上に。すでに個人アカウントで運用しているなら、今月中に移しておいてください。
やってはいけない決め方
- 「話がうまい人」で選ぶ うまさより続けられるかです。多少たどたどしくても、現場を知っている人の説明のほうが信用されます。話し方は3本目くらいから自然に良くなります。
- 出演者が決まらないまま企画を増やす 撮れない企画は在庫にしかなりません。企画は1本でいいので、まず出演者と撮影日を先に押さえる。順番を逆にしないでください。
- 社長に「とりあえず1本だけ」と頼む 1本で終わる前提の出演依頼は、ほぼ1本で終わります。頼むなら最初から「月1回、半年間」と期間で合意する。そのほうが本人も予定を組めます。
まとめ
企業YouTubeが始まらない原因の多くは、やる気でも企画でもなく、出演者が決まらないことです。そして出演者選びの基準は、話のうまさではなく「月1回の撮影を半年続けられるか」の一点です。
顔出しが難しければ、手元を映す・資料に声をあてる・声だけ出る・外部に任せる、という4つの逃げ道があります。まずは自社がどれで成立するかを決めて、撮影日をカレンダーに入れてください。そこまで進めば、チャンネルはもう始まっています。